新生WiNDyにかけてみる

orpheus2007-01-10

高級アルミケースで有名なソルダムのWiNDyブランド。昨年7月に製造元の星野金属工業が倒産してしまったのはPCを自作している人間なら周知の事実。かくいう私もWINDyのケース愛用者としてその後の経緯を注視してきたが、この半年はかなり厳しい状況だったようだ。社長のBLOGによると、

星野金属工業の倒産劇以来、瞬く間の6ヶ月間が過ぎ、今年も暮れようとしています。「WiNDyはもうダメだろう」そんな噂が業界を駆け抜け、あらゆる方面から問い合わせが殺到した7月、再開するとは決めたものの目処が立たずに途方に暮れた熱い8月、事後処理に忙殺され投げ出したい想いを社員の言葉に救われた9月、事業存続のプレッシャーをかけられながらも本格的に生産を再開した10月、まず基本から黙々と立て直そうと誓った11月、そしてようやくオリジナルケースの生産開始に漕ぎ着けた12月。

ということで、営業やサポートを手掛けてきた約30名のスタッフが自分たちでケースの製造も行っているらしい。近年の中国の経済成長に伴う需要増加でアルミの価格は高騰の一途をたどっており(ここ数年で倍ぐらいの価格になっている)、製造元の倒産という憂き目にもめげず、フルアルミケースで内部構造も常に独創性をとこだわり続けるソルダムの姿はどこか「紅の豚」に出てくる家内制飛行機工場を連想させなくもない。引き続き、同社社長の吐露するところを引用しよう。

当社で年末に発売したALTIUM FCシリーズ&ALCADIA FSシリーズは残念ながら店頭販売を行っておらず、したがってアキバPCホットラインの取材を受けることは出来ない。ウエブ販売だけでは対象とされないためである。しかし、フルアルミPCケースとして、最新の機能・性能を備えた新モデルである。デザインを踏襲している関係で外観上は目新しさに欠けるかもしれないが、鋭利にとがった機能・性能は健在である。

秋葉原の店頭に並ばない製品がアキバ系のメディアで紹介されないのは当然としても、気になるのは「鋭利にとがった機能・性能」というところ。WiNDyのアルミケースの作りは確かに素晴らしいが、CPUやマザーボードの発熱量と消費電力を抑える昨今のトレンドを考えると、ALCADIAシリーズの静粛性へのこだわりや冷却能力は明らかに過剰といってもよい。PC内部を冷却するためにファンの数を追加していったために吸気音・排気音が増大し、密閉性とエアフローのためにケースをより複雑な構造に変えた結果、それを機能させるためにより多くのファンが必要になるという悪循環に陥っている。しかも、こうした凝った作りのケースになればなるほど、また独自仕様で専用のオプションが増えるほど、製造コストは跳ね上がっていく。当然ながらメーカーの利益率は低下し、製品価格も自作ユーザーの予算から乖離せざるをえない。「鋭利にとがった機能・性能」も結構だが、それが正しい方向を向いたものなのかどうかが問題なのである*1
さて、標題の件。新生WiNDyのサイトで新春セールを開催中なので、旧ラインナップの残りものと思われるフルオプション装備のアルミケースをひとつ注文してみた。塗装は現在の愛機と同じホワイトパールマイカトヨタの旧マークIIで一躍有名になった、あの色である)。受注生産のため、届くのは2週間ほど後になる(Windows Vistaマシンとして作ることになりそうだ*2)が、早くも到着が楽しみである。安かろう悪かろうの海外製ケースでは得られない、メイド・イン・ジャパンの誇りと心意気に、ここはひとつかけてみようではないか。
WiNDy Online(オンラインショップ)
All About WiNDy(アルミケース誕生秘話ほか)
AMDが小型PC用フォームファクタDTXを提案

*1:長期的にみれば、現在のサイズのHDDはシリコンディスクとのハイブリッド化を経由して10年程度で駆逐されるだろうし、CPU同様に発熱量が大きいSLI等のビデオカードも数年のうちにCPUのコプロセッサーとして統合・縮小化されていく方向にある。マルチコアやヘテロジニアスマルチコアといったCPUだけでなく、こうしたパーツレベルのダウンサイジングも並行して進んでいるため、PCのサイズはどんどん小さくなっていく。特に日本のような住環境では、PCは小さいに越したことはない。その意味では、数年前から市場に出回っているMINI PCがデスクトップPCとの性能差をどれぐらい縮められるか、今年は注目である(現状では、まだこうした中途半端なものしかない)。

*2:IntelのニセQuad Core(Kentsfield)が真のQuad Core(Penryn)に置き換わる今年の秋まではPCを作る予定はなかったのだが、上記の通り、WiNDyの苦境にほだされて思わずケースを購入してしまったため、この勢いに乗じてマシンを組むつもりである。OSはVista。開発時にマルチコアを想定していなかったXPではメモリアクセスの重いソフトでDual Coreが不安定になるとの報告もある。なお、Kensfieldに押されてConroe(Core 2 Duo)の価格が下がるのは4月以降と言われており、そうかといってTDPも価格も高い現在のCore 2 Quadには魅力を感じない。猫も杓子もIntelのCPUに群がる状況下で、あえてAMDという冒険も面白い。さて、どうしたものか……。