いつか誰かがやると思っていた

orpheus2007-09-09

アンニンストール(社長Ver.)
おかげで、ぼくらの液晶は吹いた杏仁豆腐の破片で大変だ。ヤマハが開発した女性ボーカル合成ソフト初音ミクとの共演Ver.はこちら。本作のMADはあまりにも多いのだが、いちオシはピアノ弾き語りVer.。伝説の原曲はこちらである。
なお、ニコニコ動画でオリジナルの「アンインストール」を購入した閲覧者は現時点でマキシが281人、アルバムが404人。インパクトのあるコンテンツは――必ずしもトータル的には成功していなくても、作品の素材ないし属性そのものに潜在的な魅力があれば――“眼”をもった者が拾いあげ、例えばこうした動画サイトにアップロードし、それにヒントを得た二次創作的なMAD作品が増殖してファンの裾野がさらに拡がり、結果としてオリジナルの売り上げも伸びていく(場合によっては、かつてのMIDI職人がその域に達したように、元の作品を二次創作物が超越していくこともある*1。また匿名であるがゆえに、それなりに能力をもつ人間が制約から解放されて想像力を爆発させる機会ともなっている。実際、優れたMAD作品のいくつかは明らかにプロの仕業である)。
もちろん、こうした動画サイトに上がっている映像で満足してオリジナルを買わない人もいるかもしれない。だが、そういう人はどのみちその商品を購入するには至らないフリーライダー、すなわち広告をただで見て通り過ぎる人と同じであって、ハナからマーケティングの対象ではない。むしろ、本来コアな層だけが買っていた商品がファンではなかった一般の人々に認知され売れていくという訴求力(ネットが発信源となる、いかにも現代的なパブリシティ)の方が重要で、それだけの集客効果を企業が宣伝で実現しようと思ったら、いくら金があっても足りないだろう。音楽業界に限らず、企業の宣伝はターゲットを固定化しがちで、消費者の嗜好の変化に対応できない。売り上げの起爆材になるならば、こうしたPVの転載や二次創作の登場はむしろ歓迎・奨励すべきものなのだ。多少のトレードオフも、宣伝費だと思えば安いものである。

*1:もちろん、そこに達しない駄作がほとんどなのだが、アマチュアの手によるものが多いので当然である。しかし、それでいいのだ。国籍・性別・職業・肩書きといったものに左右されない空間は多様な表現が生まれるために必要である。その意味ではニコニコ動画は会員制で閉鎖的なところもあるのだが、あえてポジティヴに考えれば、ニコニコで生まれた名作はすぐにYouTubeに転載されることが多く、ニコニコ内部でいわゆる「これはひどい」作品がまず淘汰され、検品の済んだ(?)質の高いMADが海外に輸出されているとも言えるだろう。まあ、そうでない駄作が直接YouTubeに上がっているので焼け石に水かもしれないが。