美浜原発の事故

降り注ぐ高熱蒸気に逃げ場なく、「まさか」関係者衝撃
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20040809ic26.htm

2階天井付近の配管に大きな穴が開いていた。配管を包む石膏ボードの破片が床に飛び散り、床には熱湯が踝までたまっていたという。建屋2階は消防隊員が突入を躊躇うほどのすさまじい熱気だった。

事故を起こした原発はいわゆる「加圧水型軽水炉(PWR)」で、三菱重工が建設したもの。危険性の実情が社会に伝わってこない原発産業界の“闇”の部分を考えれば、連日報道されている悪名高いあの三菱自動車をはるかに上回る業界全体での不正隠しも懸念される。なお、全国で稼働している原発のうち、およそ半分は三菱重工*1である。(なんて危険な国に住んでいるんだろうか!)

政府は電力不足を理由に老朽化の進む原発の稼働年数を40年程度まで引き上げようとしているが、今回事故を起こした美浜原発三号機はまだ25年しか稼働していなかった。原子力発電という“手間のかかるシステム”には徹底したメンテナンスが不可欠だ。原発業界がその努力を怠れば、同様の事故は今後もまた起こるだろう。

今回の事故を受けて、経済産業大臣が「原子力エネルギー政策に対する国民の信頼を回復したい」と弁明していたが、被爆経験の歴史を持つ日本人の心理から原子力に対する恐怖心を払拭することなど、無理な話である。また安全性だけでなく、経済性や環境負荷といった点からみても、原発は他の発電システムよりもはるかにコストのかかる“頭の悪い方法”なのだ。この“金食い虫”の原発に国が金を注いでいたら、代替となる新しいエネルギー産業だって育つはずがない。

原発をやめれば電力の供給が不足する、と官僚や電力会社は主張してきた。しかし、国内全体のエネルギー供給量に占める原発の割合はせいぜい3割程度で、仮に国内の原発が全て停止しても、日本の経済や生活が直ちに麻痺することはない。そもそも、都市部における電力の大量消費を推奨し、過剰な電力供給を推進してきた経済産業省原子力エネルギー政策そのものが、大きな間違いなのだ。

21世紀にもなって、未だに”原発神話”や“プルサーマル”といった妄想に固執している人達がいる。だが、これだけは声を大にして言いたい。老朽化した原発は順次廃炉にすべし。原発に依存しないエネルギー循環型社会に向けて、経済産業省と電力業界*2は直ちに方針転換をすべきである。国が強引に推し進めてきたエネルギー政策によって、これ以上の犠牲者が出る前に。

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*1:今回の事故は製造元に直接的な責任はないと思われるが、三菱関連の欠陥事故が相次いでいるので、あえて指摘させていただいた。

*2:電力業界は原発をやめたくて仕方がないのだが、経済産業省原子力政策を推進していて、足を洗えずにいる。なお、原発に関する内部告発が増えている理由として、寿命で安全稼働に不安が生じている原発が増えたこと、それに対する安全対策がなおざりにされていることが考えられる。