バイオコントロール

ナショナルジオグラフィック「地球大異変」の最終回を観る。バイオコントロールとは人間が破壊してしまった生態系を人為的に調性して元に戻そうとすること(生態系は非常に複雑なので、一度失われてしまったものが全て元通りになることはないけれど)を言うが、諸外国のそれに対する取り組みはかなり徹底しているようだ。
世界最初の国立公園として知られているアメリカのイエローストーンでは、1930年代からアスペン*1の成長が止まり、水辺から緑が失われてしまった。研究者によると、同じ1930年代に捕食者のオオカミを白人が退治してしまったことが生態系崩壊の主な原因だという。そこでカナダから連れてきたオオカミをイエローストーンに30頭ほど放ち、何年にも渡って追跡調査を行った。すると、オオカミの食べ残した死骸を他の動物たちも必要としていること、オオカミが獲物を追い回すことで育ち始めた若い植物を草食動物が食べ尽くすことが減り、結果としてイエローストーンの緑が回復しつつあることが確認された。要するに、オオカミがかつて生態系に深く関わっていたということが証明されたのだ。この試みの結果、国立公園の周囲ではオオカミに家畜を襲われる牧場が増えてしまったが、人に害を及ぼす動物であろうと生態系の回復のためには繁殖させてみる、という徹底した態度には感心させられた。
また、九州の倍の広さを誇るアフリカのビクトリア湖では、外部の人間が持ち込んだ外来種ホテイアオイ*2が異常繁殖し、水面を覆って湖の生態系を破壊、マラリアなどの病気の発生源になっている。これほどホテイアオイが爆発的に増えてしまったのは、この湖に天敵がいなかったためだ。そこで現地では他の植物に影響のないことを確認した上で、ホテイアオイを好んで食べるゾウムシを湖に群生している葉につけ、湖からホテイアオイを減らすことに成功したという。
このようにバイオコントロールが生態系の崩壊に役立つこともあるが、それは稀なケースだ。種をめぐる問題では、ほとんどが手遅れになっているという。例えば同じビクトリア湖で言えば、外部から持ち込まれたナイルパーチという肉食魚が湖にしか生息しない約300種もの魚を絶滅させてしまったことは、もはや取り返しがつかないのだ。ひとたび崩れてしまった湖の生態系は、二度と元の姿に戻ることはない。

*1:ヤナギ科。ホワイトポプラ

*2:布袋葵。英名ウォーター・ヒアシンス