コーラス(Les Choristes)

orpheus2005-04-09

★★★☆☆
国内に多くのアラブ人を抱えるフランス。だが、911のショックと欧州統合の進展は白人中心のヨーロッパの伝統に立ち返ろうという欲求を生み出しているようだ。西洋の声楽はローマ=カトリックと共に発展してきたが、本作にはそういったキリスト教の伝統に回帰しようという製作者の意図が露骨に表れている。先に公開された「アドルフの画集」や「永遠の語らい」でも鼻に付いたこうした政治的な意図はとりあえず甘受するにしても、寄宿学校の子供たちが“心変わり”する過程の描写が不十分だったり、ひねりのない半端な結末にはやや不満が残る。個人的には好きな素材なのだが……。同じプロデューサーが製作しているせいだと思うが、ベタなノスタルジーを楽曲の良さ*1で引っ張るのは名作「ニュー・シネマ・パラダイス」と同じパターン。フランス映画をこんなに平板で退屈なものにしてしまうのだから、勢いだけの欧州統合というのも考えものかもしれない。シネスイッチ銀座ほか。97分。
(2004,フランス)

*1:音楽は★★★★☆。ただし合唱より伴奏のオケが騒々しいので減点。歌だけで勝負せい!