黒船到来

orpheus2007-01-30

紆余曲折のあったLonghornもついに出航。今晩の秋葉原で最も盛り上がった場所といえば、“兄貴”と“神様”の降臨したドスパラだろう。
Windows Vista深夜販売 - 全国速報ページ(AKIBA HOTLINE)

ドスパラUltimateカフェではAMDの“兄貴”こと土居憲太郎氏が登場。「Vistaを最高の組み合わせで」というスローガンのもと、AMDNVIDIAのパーツを組み合わせたPCをアピールしたほか、先日発表されたばかりの小型PCフォームファクタDTXの解説、一般には初めて公開するというクアッドコアのダイを観客に公開した。観客席にいたIntel“神様”天野伸彦氏を意識して、「雲の上の方がいますので言いにくいですが…」、クアッドコアのダイを見せながら「神様が物欲しそうにしていますが…」などと挑発していた。

AMDの“兄貴”に続いてIntel“神様”天野伸彦氏が登場。まずは真冬の深夜イベントということで、使い捨てカイロを30人を配布する気配りを見せた。「うちは(Core 2 Duo)では夏にやったぞ、週末のタイミングでやったぞ」と、Windows Vistaの真冬の平日というタイミングのイベントにまずチクリ。秋葉原にいるような自作PCユーザーの集まりを「アキバ村」と定義した上で、「アキバ村住民としてはWindows Vistaを使い込んで意見を言っていくべきだよね」とまず主張し、その後IntelプラットフォームでWindows Vistaを使う際の説明をしたあと、最後はお決まりの脱線で「(Vistaの)SP1はいつなのか」というプレゼンテーション画面も出た。“神様”にWindows Vistaのことを聞くシーンがあり、ガジェットについて聞かれると「あ、使っていない」とバッサリ。新機能はあまり使わずにガジェット類も切っているそうで、いいなと思ったのはマルチユーザー関係の機能と答えた。

祭りは勝手にやってくれ、ということで以下が本題。
マスコミは「PCの売り上げが落ちている」とよく報道しているが、あれは大手メーカーに取材しただけの情報で、全体像からは程遠い。機械のことはよく分からないという客が、周回遅れのパーツと無駄なソフトから成る大手メーカーのPCを新品と思い込んで購入している一方で、自分に必要なパーツを精選して自作機を組むのが(デスクトップに限れば)当たり前とする、もうひとつの確固たる世界がある。最初は失敗することもあるだろう。だが、何事も恐れていては成し遂げられはしない。昔に比べればPCの自作は容易になっているし、ネットで少し調べれば相場やパーツの相性問題、ドライバ情報などいくらでも得ることができる。もちろん自作する側の動機も様々だ。安定性を重視したマシンを組む者がいれば、オーバークロックでパーツの性能の極限まで追い求める猛者もいる。そうした層に対して、マスコミは等しく調査の眼を向けているといえるだろうか? 否。「PCが売れなくなった」のではなく、「メーカー製のPCを買う客が減った」だけなのだ*1
ラジオ会館に電子部品を買いに来るかわりに、PCのパーツやソフトを求めてツクモドスパラに集まる客たち。今も昔も秋葉原は変わらない。ただ、店頭に並ぶ商品は間違いなく海外製品が増えている。その流れでいえば、今回の“Vista”は何年かぶりにやってきた《黒船》の到来と捉えることもできるだろう。MADE IN USAを受け入れよ。それが彼等の変わらぬメッセージである。民主主義かOSか。扱っている《製品》が違うだけで、彼等にとってはバグダッド秋葉原も同じ《市場》にすぎない。モノで溢れたこの街で最も話題になっている製品が、もはや日本製ではないという現実。お祭り騒ぎの中で、素直に喜べない自分がいる。

*1:より正確には「国内の大手メーカー製PCを買う客が減った」。圧倒的な大量生産でPCの単価を押し下げたDELLやHPの日本市場参入や自作PC売店の増加なども、大手メーカーのPCの競争力低下に拍車をかけた。デスクトップではもはや利益を上げられない以上、より製造技術力の問われるノートPCの分野に、国産メーカーは開発力を注力すべきだろう。