仮病の好きなおじさんは好きですか

週刊現代が暴いた“安倍スキャンダル”の全容(立花隆)

そして安倍首相自身は、(週刊現代の)取材依頼を受け取ったその日のうちに電撃的に首相を辞任して、さらにその翌日午前中から病院に入院してしまうという形で公衆の前から姿を消すという道を選んだわけである。(略)安倍側がこれだけ過敏な反応を示したのも、その取材依頼書を見ただけで、それがどれほど厚みのある取材の上に書かれたものであるかがすぐにわかったからだろう。要するに身に覚えのある内容だったということではないのか。(略)この「週刊現代」の記事のすごいところは、データ的な取材の厚みもさることながら、財務省相続税担当官をちゃんと取材して、「この通りなら、これは脱税ですね」とハッキリ言わせていることだ。

あのときもし、突然の辞任宣言なしに、臨時国会が開かれ、与野党逆転参院でこの問題の議論が始まっていたり、この週刊現代の記事の通りのことが明るみに出てきたならば、安倍首相がどうあがいても、野党からの国政調査権攻勢を防ぎきれず、国会が止まったり、総理大臣の問責決議案が通ったりして、見るも無残な政治的死亡をとげていただろう。

週刊誌出身者による、週刊誌擁護のための、まあ、そうだろうなという話。でもそれが真実に近かったりするから、先が思いやられる。ポスト小泉の党首選びの時点で自民党が候補者アベシンゾーの身辺調査をスルーしたために、アベシンゾー政権ではもろもろの大臣だけでなく当の本人も辞任へまっしぐら、というアホな結果になった。茶番劇につきあわされた国民の時間を返せと言いたいが、それ以上に、政治部の古参記者たちが最初からこの茶番を知りながら黙っていたことに対する、政治−報道の癒着関係への不信感がふたたび根をもたげるのである。