平成恐慌は格差を是正するか?

腹が立つのはボクより給料が高い“バブル組”……氷河期世代にはびこる不満

大手コンピューターメーカーに(就職氷河期の)「平成9年組」として就職した城さんが、その「事実」に気づいたのは人事部にいた入社3年目のころだった。社内の人員構成をみれば、どう考えても将来のポストは足りない。生涯賃金を計算しても現在の60歳に比べ3割は減る。理由は根本的な問題だった。
「つまり勤続年数に応じて賃金が上がるというシステムは、組織も同様に成長を続けていかねば維持できないわけです。昭和の時代ならそれも通用したが、経済全体が縮小しつつある今、そんな企業は数えるほどしかない」
実際、定期昇給はすでに多くの企業が見送っており、年功序列型の給与体系は崩壊しつつある。現在の不況下では賃下げすら現実味を帯びている。一方で、「ポスト」だけは、多くの企業で年功序列型が絶対的なものになっている。しかも「上」にはポストを待つ大量のバブル世代たちが長蛇の列をつくっている。
「年功序列型組織で定期昇給がなく、序列も上がらないのなら、基本的に報酬も上がらない。能力給などの制度も同年代と比べているだけでたいした差はつかない。つまり30代の会社人生のレールは非常に微妙なところを走っているのに、会社側はそれをはっきり言わないわけです」

この「平成恐慌」でどの企業も余剰人員の削減が最大の課題となっている。派遣切りに留まらず、いちばん“ダブついて”いて“危機意識と能力の乏しい”バブル世代の正社員にリストラの大鉈がふるわれるのももはや時間の問題だろう。ただし、格差は縮まっても、低所得クラスの底上げではない以上、それは決してよい形とは言えない。就職氷河期の低所得水準がこれからのスタンダードとなって、他の世代にも拡張・適応されることになると思う。