天使と悪魔/スタートレック/ターミネーター4

天使と悪魔 ★★★☆☆

トム・ハンクスのヴァチカン珍道中記。宗教も科学も人間社会を秩序づけるために人類が開発した“装置”という意味では同根であり、それを天使や悪魔に喩える不毛な二元論。それにしても、今回もまたハンクスが脇役にしか見えないのだが……。監督ロン・ハワード、脚本アキバ・ゴールズマン/デビッド・コープ。Angels & Demons, 138mins, 2009。
スタートレック★★☆☆☆

クローバーフィールド》のJ.J.エイブラムスの逆光を多用したスケール感たっぷりの(そして画面を揺らしすぎの)映像とレナード・ニモイによる、ニモイのためのストーリー。それ以上でもそれ以下でもない。TVシリーズを観たくなるアペタイザー的な作り。スポックの母親役がとても綺麗な目をしていたので気になったが、ウィノナ・ライダーカメオ出演していたのか。監督J.J.エイブラムス、脚本ロベルト・オーチ/アレックス・カーツマンStar Trek, 126mins, 2009。
ターミネーター4 ★★★☆☆

ダークナイト》がクリスチャン・ベイルによる、ベイルのためのブルース・ウェイン映画になってしまったように、《T4》は同じベイルによる、ベイルのためのジョン・コナー映画になってしまった(真のベイルを堪能したい人は《リベリオン》のベイルの美しいガンカタに酔いしれるべし)。さて本作だが、確かに映像のクオリティは高い。しかし、どれほど予算を掛けたところで、もともと《ターミネーター》シリーズが“B級”SF映画としてスタートした出自はどうしても拭えない。カリスマ然としている今回のコナーに対し、若輩者のカイル・リースはあまりにも頼りなく、血のつながった父子とは到底思えないそのギャップの大きさを含め、4作目の随所に漂っている“超B級”な味わいがターミネーター・ユニバースの悲しきDNAをキチンと引き継いでいるところは好感がもてる(もちろんあの“筋肉の人”もサービスショットで降臨)。脚本の粗さやディテールにツッコミを入れれば幾らでも埃は出てきそうだが、第一作の熱烈なファンによる贅沢なオマージュ作品だと思って素直に楽しむことを推奨したい。なお、本作はT3の時間軸とは異なる設定で、T1→T2→サラ・コナー・クロニクルズ(これでT3とは別の未来が生じた)→T4(本作)という流れになっている。制作者サイドも“ヘタレ”な青年ジョン・コナーの登場したT3は「存在しなかった」ことにしたいようだ。シリーズの流れを忘れてしまった人はこちらを参照。監督マックG(チャーリーズ・エンジェル)、脚本ジョン・D・ブランケート/マイケル・フェリス。Terminator Salvation, 115mins, 2009。

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久しぶりの映画レビューなので、ついでに追加。
消されたヘッドライン ★★★★☆
産複合体やジャーナリズムに興味のない人には星ひとつになってしまう恐れのある映画だが、一線を越えて現代の十字軍気取りで世界の危機を招いた*1ブッシュ政権に対するハリウッドの自戒の念が滲み出た良作。売上至上主義で黒幕に迫りきれないチキンハートな展開はマスコミの現状を描いた揶揄として前向きに受け取りたい。なお、戦争をめぐるメディアの関与を描いた作品についてはロバート・レッドフォードの《大いなる陰謀》('07)を参照されたし。監督ケヴィン・マクドナルド、脚本マシュー・マイケル・カーナハン/ビリー・レイ/トニー・ギルロイ。State Of Play, 127mins, 2009。
ブッシュ ★★★☆☆
アメリカ史上最低の前大統領を、同様に大統領を務めた父親ブッシュの目線から描いている部分が秀逸。原題の“W.”(テキサス訛りで“ダブヤ”と呼ばれている)は父親 George Herbert Walker Bush の“W”であると同時に、馬鹿息子 George Walker Bushの“W”であり、ダブル・ブッシュの物語という意味。監督オリバー・ストーン、脚本スタンリー・ワイザー。W., 130mins, 2008。

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《エイリアン5》はリドリー・スコットがメガホンを撮ることに難色を示していて頓挫中。《トロン2.0》《トータル・リコール》《ショート・サーキット》のリメイクは順調に進んでいる模様。また、ミッキー・ロークが悪役で登場する《アイアンマン2》も撮影快調ということで、早くも楽しみである。なお、《ゾディアック》と《アイアンマン》で華麗な復活を遂げたロバート・ダウニー・Jrの最新作はシャーロック・ホームズで、こちらも気になるところ。

*1:イラク戦争による原油価格の高騰とサブプライム・ショックは地続きの問題。なお、今年になってまた原油価格や商品先物が上昇してきているのは再び金融バブルが起きていることの証左である。