ゴジラ(1954年版)

orpheus2004-11-14

★★★★☆
海底の奥深くに眠っていたジュラ期の謎の古代生物が、アメリカの水爆実験の影響で怪獣となり日本を襲う。大戸島に古く伝わる伝説から、その怪獣はゴジラと名付けられた……。後の娯楽怪獣映画のイメージで語ることなかれ。初代ゴジラは大人のために作られた意欲作だ。敗戦から10年足らずの1954年に作られた本作には、当時の日本人の戦争に対する恐怖が色濃く表れている。放射能を撒散らす怪獣への恐怖から「また疎開しなくちゃ……」と語る長崎出身者の台詞はあまりにもリアルで重々しい*1。また、ゴジラ上陸で焦土と化した首都の姿を見て、大空襲で焼け野原となった東京の光景を思い出さない観客はいなかっただろう。無能な政治家や下世話なマスコミ、センチメンタルな民衆というステレオタイプな演出も、日本人の観客にはお馴染みのものだ。もっとも、だからといって50年前と今の日本人の本性が変わっていないなどと言ったら、先人達に対して失礼というもの。資源を求めて勝算なき戦争に突入し、玉砕寸前まで追い込まれた経験から、当時の日本人は某かの教訓を学び取ろうとした。ところが、今の日本政府はどうだろう。資源を求め、他人の土地へと土足で踏み込む盗人(ブッシュ)の仲間となり、その分け前(原油)にありつくことばかり考えてはいないだろうか? 経済成長ばかりを追い求めた結果、私達は愛国心だけではなく、人としての道理も失ってしまったようだ。
怪獣特撮映画の原点にして頂点。監督:本多猪四郎、特撮:円谷英二
(1954,日本)

*1:戦後教育の中で戦争について語ることは忌み嫌われるようになり、今日の日本社会は外交問題(例えば北朝鮮問題など)に対して、実質的には自由な議論ができなくなっている。小泉政権のなし崩し的な自衛隊イラク派遣についても、憲法との整合性や盲目的な対米追従外交の是非といった議論をもっと摘み重ね、国民の支持を仰いだ上で決定されるべき重要事項なのだが。