ハウルの動く城(6)

orpheus2005-01-18

ネタばれにつき、未見の方はご注意を。読売オンラインより。http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/ghibli/cnt_howl_sound_20050112.htm

「メロドラマにならないんですよ」
宮崎監督が久石譲に打ち明けたのは、1日目の録音が全て終わった後だった。
「ケイヴ・オブ・マインド」(サウンドトラック盤では「星をのんだ少年」に改題)で一気にエンディングに突入する構成だったが、最後にもう一度テーマ曲「人生のメリーゴーランド」を登場させたいというのだ。

当初の編曲でも「ケイヴ」の最後にテーマ曲の断片は挿入されていた(実はサウンドトラック盤に収められているのはこのバージョン)。しかし、巨大スクリーンで演奏と一体になった映像を目にしたことで、「ケイヴ」の演奏に満足しながら、もっと強烈にテーマ曲を欲してしまったのだ。

一瞬の静寂の後、ソフィーが外へ飛び出す場面で(久石から)新たな指示が出た。「ここから『花園』に切り替えて」

「花園」はハウルがソフィーに思いを伝える場面に流れる曲で、「人生のメリーゴーランド」のメロディーで彩られている。この曲を今度はソフィーがハウルに思いを伝える場面で再登場させようというのだ。

ようやく先日の謎が解けました。監督の要望で「星をのんだ少年」(当初の曲名は「ケイブ・オブ・マインド」)を途中でカットし、「花園」(「人生のメリーゴ−ランド」の変奏で、いわば「恋愛」のテーマ曲)を再会シーンにもってきた、というのが真相のようです。これを読むと《ソフィーがハウルの契約の秘密を知る》〜《ハウルと再会する》までの一連の場面が最初から映画通りの尺で構成されていたことが分かります。

ただ、宮崎版「ハウル」は「老い」「家族」「恋愛」など複数のテーマが渾然としていますので、本当にメロドラマに徹するというのであれば、ハウルとソフィーがお互いを理解していく過程にもっと力を入れて描いて欲しかったですね。もっとも、結婚生活の長い監督からしてみればこれで十分*1なのかもしれませんが。映画「ハウル」に対する私の評価が星四つなのは、こういった点に物足りなさを覚えるからだったりします。

*1:荒井由美の歌を聴きながら絵を描いてきた宮崎監督ですから、今さら安っぽい純愛ブームに乗りたくなかったのでしょう。「描かぬが華」の心境であった、と想像します。