父、帰る

orpheus2005-03-09

★★★☆☆

母とささやかに暮らしていた二人の兄弟のもとに、12年間家を出ていた父親が帰ってくる。そして父親は二人を連れて旅に出るが…。

過去の空白を埋め、互いを理解するにはあまりに短く、あまりに非情な旅。何も語らず、息子たちを力でねじ伏せる父親が象徴していたものは、大人の男に対する恐れなのか、それともかつての社会主義の姿なのか。急増するロシアのストリート・チルドレンを取材したドキュメンタリーを見ていたこともあり、父子のロードムービーにもかかわらず、家庭の崩壊が子供の心に与える影響のことばかり考えながら鑑賞してしまった。作家性の強い哲学的な作品で好き嫌いは分かれるだろう。監督アンドレイ・ズビャギンチェフ、111分。三軒茶屋中央劇場にて。
(2003,ロシア)