ワールド・トレード・センター
★★☆☆☆
オリバー・ストーン最新作。政治色の強かった前作「アレキサンダー」と比べると、同じ監督が作ったとは思えないほど小さなスケールでまとまっている。「ここには政治はない*1。この映画は勇気*2と生存を描いている」とストーン自身が語っているように、TVで繰り返し流された“米国本土への攻撃”の衝撃的なシーンは抑えられ、絶望的な状況に置かれた主人公2名と途方に暮れる家族たちに焦点が当てられている。舞台の中心は崩落したWTCの瓦礫の下という密室劇で、観客を飽きさせないよう映像に工夫は凝らされているものの、月並みな回想シーンとニコラス・ケイジのクローズアップの連続にはやはり辟易。また、ヨーロッパ移民やヒスパニック、黒人観客を意識した露骨なサービスショットも鼻についた。要するに、別に誰が監督でもよい、新鋭アンドレア・バーロフの脚本がすべてという作品。本作を観る際に注意したいのは、イラクやアフガニスタンの人々と異なり、9.11の犠牲者の家族にはハリウッド映画という世界最強のメディアがあり、同盟国の映画館でこうして大々的に流されているということだ。同じ9.11を描いて話題になった「ユナイテッド93」は未見なので比較できないが、自己批判すら出来なくなった今のハリウッドに何かを期待する*3方が間違いなのかもしれない。「テロでアメリカが一つになった」などと信じている者はまだ幸いである。何かが起きた時に彼の国に守ってもらえると信じている、某国のめでたい連中よりは。125分。
(2006, アメリカ)
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