SAYURI

orpheus2006-11-03

★★☆☆☆
公開当時、劇場で観るのを躊躇った作品。今日は“米国のプロデュース”で日本国憲法が公布されてちょうど60年の節目ということもあり、迷走する超大国アメリカと日本の“普通じゃない関係”について考えつつ鑑賞した。内容は予想していた通り。花街のセットには力が入っていたが、歌舞伎と宝塚と京劇を混ぜたようなチャン・ツィイーの舞姿や化粧顔、芸妓と舞妓のディテールの混同、ステレオタイプな日本語の使われ方などには甚だしく興ざめ。流し目シーンの香港映画のような顛末や、神社で鐘の音が鳴るあたりはもう茶番としか言いようがない。「ラスト・サムライ」のレビューで書いた通り、ハリウッドは日本を正しく描くことができないし、正しく描くつもりもないのだろう。違和感を覚えつつも、異なる文化をそのまま受容するという謙虚な態度なくして異国の人々と同じ目線を共有することは到底できないが、黙っていては誤解を招くばかりである。岩崎峰子が本作の原作者アーサー・ゴールデンを訴えたように、暴走を続けるアメリカに日本は異議を唱えるべきなのかもしれない。ただし、それは同盟国としてではなく、オリエントの深い霧の中に彷徨う共犯者として。外なる時分の花は見出したり。されど、内なる真の花は見出しがたし。現実の日本はもっと醜い。だからこそ愛しいのだ。
(2005,アメリカ)