Winter NAMM 2007

orpheus2007-01-20

世界最大の楽器見本市、NAMMショーがカリフォルニアのAnaheim Convention Centerで開催中。

Rolandからはデュアルコア搭載のV-Synth GTが登場。かなり機能が強化されている。詳細はまだ発表されていないが、AP (Articulative Phrase) Synthesisは各楽器に特有のアーティキュレーションモデリングし再現する機能、Elastic Audio Synthesisは同社のAnalog Feel機能を発展させたものではないかと推測。他に中東向けのシンセサイザーEXR-46という面白そうな代物も発表されていたが、これは国内では発売されそうもない。またEDIROLから発表されたデジタルミキサーのうち、上位機種のM-16DXの背面を見るとDX-BUSという端子があり、R-BUSのチャンネル数を倍にしたものではないかと思われるが、これも詳細は不明。

KORGはM3とR3を発表。M3はOASYSのインターフェースを踏襲した鍵盤と音源のM3Mから構成されており、第二世代KARMAを搭載した音源にはRADIASボードやFIREWIRE、新しいサウンドROM等を拡張可。120ボイス、4段階のベロシティ・スイッチ。サンプリングではKORG/AKAIのほか、海外で人気のあるSoundFont2.0も読み込み可能になっている。R3はボコーダーのついたRADIASといった趣で、ZEROと一緒にライブで活躍しそうな機材。あとはLegacy CollectionやKAOSS PADのラインナップが増えている。

YAMAHAは待望のMOTIF XSを発表。プラグインボードを廃止したかわりに、波形やエフェクト、アルペジエーターを強化。1ボイスあたり8エレメントというパワフルな構造がハードシンセに必要かどうかは微妙なところだが(より緻密なボイス・プログラミングが必要)。海外サイトに上がっているデモ曲を聴いた限り、MOTIF ESよりも出音が繊細になっている感じがする。これはD/Aというよりも波形のキャラクターの違いによるものだと思われるが、好みの分かれるところかもしれない。それにしてもMM6の同時発音数32って少なすぎないか? のだめで音楽に目覚めた中高生あたりでも買える価格(5万円前後)に抑えたのはいいとしても、バッキングを何パートか鳴らした状態でピアノのペダルなんて踏んだ日にゃ、余裕で音切れしそうな予感。シンセ入門編としては手頃なんだろうけど。

さて、今回のNAMMショーで最大の目玉はおそらくDigidesignから出たソフトサンプラーStructureだろう。Pro Toolsに最適化されているため、多くのユーザーがこの製品にシフトすると思われる。PC一台で完結可能なこと、そして安定したアプリケーション。大概のユーザーは多機能なものよりも、容易に理解ができ、操作のシンプルな製品を好む傾向がある。Wiiのように。

また、Rhodesの復活も話題になっている。その名もMark 7。USB端子まで付いているのは時代の流れということか。

個人的に注目しているのは、EASTWESTのFab Four。ビートルズが当時使っていたものとほぼ同じ楽器や機材を用いてレコーディングされたソフト音源で、エンジニアはKEN SCOTT、奏者はLAURENCE JUBERという往年のファンならば馴染みの顔ぶれである。ギターやドラムはもちろん、Birthday PianoやStrawberry Flutesといったビートルズサウンドもちゃんと収録されている。また、ADT (Artificial Double Tracking)を再現したエフェクトも搭載されていて、まるでAbbey Road Studioそのものがパッケージ化された印象がある。ビートルズの完コピを目指す人には必須アイテムになりそうだが、気になるのは64bit対応という敷居の高さ。Vista Ultimateの64bit版は(発売直前のRC1の時点でさえ)32bitアプリとの互換性の面で不具合がかなり報告されており、これまでのDAWプラグインが動かないという可能性が非常に高い。EASTWEST製品のことだから32bit環境では重いと思われるし、当分は様子見といったところだろうか。なお、この会社のソフト音源はボイス・プログラミングが雑なことでも有名である。

E-muはEmulator X2 Platinumを発表。こちらも32bitと64bitの2つのバージョンが用意されている。MicrosoftIntelのお膝元の米国企業はどこも開発のスピードが速い。もっとも、日本語にローカライズされたものが発売されるのは夏ぐらいになりそうだ。

他にもいろいろな機材が発表されている途中だが、関心のある機材はこんなところ。Windows Vistaの発売に向けて、電子楽器業界も過熱気味のようである。