恋愛帝国主義に関する覚え書

恋愛帝国主義(…勝手に命名。後悔はしていない)とは、恋愛を商売にしてきた旧恋愛資本主義が、ウェブ2.0の進展とともに「恋愛せずば人にあらず」「モテなければ人にあらず」的なイデオロギーへと転じ、旧来の価値観や社会的規範を根こそぎ破壊していく状況をいう。すでに旧恋愛資本主義時代の犠牲者として「負け犬」が顕在化してきているが、恋愛帝国主義の拡大は、恋愛格差を加速させ、さらに多くの恋愛不適応者と少子化をもたらす危険性が高い。
・恋愛帝国主義ウェブ2.0は親和性がきわめて高い。というより共犯関係にある。これまでインターネットは男女に等しく開かれてきたにも関わらず、その初期段階(ウェブ1.0)においてはコンテンツを製作する人間は圧倒的に男が多かった(ような気がする)。ところが、よりフラットな関係性を志向し、操作もはるかに簡単になったブログやSNSといったウェブ2.0のサービスが始まると、状況は一変した。もともとコミュニケーション好きな女性たちがまさに自分たちのために作られたかのような、お手軽なバーチャル井戸端(給湯室)を見逃すはずもない。女性の圧倒的な支持を得てブログやSNSが急速に広まると、多くのヤワな男もその後に続いた。恋愛帝国主義の誕生である。
・恋愛帝国主義者の価値基準は「カワイイ/キモイ」と「モテ/非モテ」である。前者のポジションに就きたがる、つまり、愛されたい願望の強い男女ほど騙されやすい。ブログやSNSで問題となっている、恋愛をダシにした詐欺の横行は、まさに恋愛帝国主義的な出来事といえよう。なお、恋愛帝国主義者はピンク色を好む傾向がある。
・いわゆる“女子”ブログの言説もまた、実に恋愛帝国主義的である。彼女たちは自分が恋愛というイデオロギーに染まっていることに無自覚のまま、“女子”であることを盾に取り*1、従来の社会規範を脅かす*2。もちろん、彼女たちが普段から馬鹿にしている「負け犬」に自分たちも実は片足突っ込んでいるなどとは、夢にも思っていない*3
・「女子はかわいい」(だから何をしても許される)と嬉々として語る恋愛帝国主義者は、他の主義者と議論しない。議論をしているポーズだけである。彼女たちの薄っぺらい主張の皮を剥いてみると、そこには「かわいいワタシを見て」という釣り行為しか存在しない(それを懸命に擁護する哀れな男性ブロガーたち。彼らもまた恋愛帝国主義者なのだ)。逆に、昨今の過剰な「かわいい信仰」に激しい違和感を覚えている女性にとっては、今の日本社会は悪夢ですらある*4

*1:女子とは、80年代後半に出現した迷惑な中年主婦層(いわゆる、オバタリアン)の低年齢化したものか?と最初は思ったが、考えてみれば、オバタリアンは出産や育児の苦労を経た上で「母親のワタシって、エラいでしょ?」と主張している訳で、ひたすら恋愛を消費するだけの女子と一緒にするのは失礼か。ついでに言えば、負け犬の本音は「結婚に縛られずに自立したワタシって、エラいでしょ?」である。

*2:“女子”性の優越は、母性や父性(大人社会)の軽視や非モテ拒否へと通じる。“女子”から遠いものほど、否定されやすい。

*3:最近、日本でもようやく子宮年齢という新たなスケールが導入され、20代の女子であっても出産に関しては「負け犬」になりうるケースも出てきた。

*4:「“女子”ブロガー? 『非モテ女子の遠吠え』じゃないの?」などと思っても、良識ある“はてな村”の諸君(笑)は決してそれを口にしてはいけない。“ネットイナゴ”もそろそろトランスフォームすべきなのだ。