体力勝負

聞こえてきた世界大不況の足音――サブプライムローン問題の本番はこれから

次なる時限爆弾は中国か

 第4懸念は、サブプライムローン問題を契機とした中国のバブル崩壊だ。現地(内陸のハルビン)の中国人に聞くと、銀行はマンション購入資金であれ、車の購入資金であれ、少額の頭金でいくらでも融資してくれるという。やがてマンション価格が上がれば担保余力ができ、さらに追加融資を受けて別の物件に投資する。現にどこへ行ってもマンションの建設ラッシュだった。この構図は、かつてのわが国のバブルや最近のアメリカの住宅バブルに酷似する。しかも、恐ろしいのは、彼らが退職金を全額株や不動産につぎ込むなど、クレージーな投資を繰り返していることだ。筆者は、北京や上海がバブルの渦中にあることは承知していたが、こんな地方都市までがバブルに踊っていることに衝撃を受けた。(中略)
 中国は2002年以降毎年500億ドル以上という驚異のペースで海外からの直接投資を受け入れてきた。中国急成長の原動力だ。だが、ごく最近の流入ピッチは異常だ。06年の658億ドルから昨年は748億ドル、そして、今年は上半期だけで前年同期比45.6%増の524億ドルに膨れ上がった。その内訳をみると、不動産業が全体の22.7%の119億ドル(約1兆2500億円)と群を抜いて高い。(中略)
 筆者の推測では、こうした投機マネーはかなりの部分が最終的に不動産に流れているはずだ。1997-98年のアジア通貨危機ではないが、この投機マネーが現在の不安定な金融環境の中で一斉に引き揚げれば、一瞬のうちにバブルが崩壊するような気がしてならない。(中略)

白日の下にさらされるファンダメンタルズ

 アメリカ経済は60年代後半から凋落をはじめ、80年代以降は投資銀行ビジネスがその穴埋めをしてきたという歴史的事実がある。政府が金融立国への転身を図り、全力で投資銀行ビジネスを後押ししてきたというほうが正確だ。98年のシティコープとトラベラーズの非合法な合併を承認したロバート・ルービン元財務長官も、現在のヘンリー・ポールソン財務長官も、ゴールドマン・サックス出身である。日本でいえば、野村証券の社長が財務大臣を務めるようなものだ。その投資銀行ビジネスが行き詰った今、ふたたび不健全なアメリカ経済と脆弱なドルという実態が浮き彫りになる

米国発金融危機後の中国経済 8%台の安定成長続けられるかが鍵 東洋学園大学 朱建栄教授に聞く

 米国発の金融危機の影響は、意外に大きい。一つは米国債を多く保有していること。これがドル安で減価してしまう。また、米国経済が不況に陥ると、それが中国の対米輸出に跳ね返ってくるなど多方面で悪い影響が出てきます。
   半面、中国にとって、国際関係の強化につなげるチャンスでもあるのです。米政府は7000億ドルもの公的資金を投入する金融救済法案を成立させましたが、このうち1000億ドルを中国政府が購入する。実際に、胡錦濤国家主席ブッシュ大統領に協力を約束したことです。世界はこれまで米国中心の金融システムで動いてきました。それがいわば修正されるわけで、中国は金融分野で発言力を強めることができるのです。(中略)
 高齢化の進行は大問題です。2020年には日本に追いつくとまでいわれています。「ひとりっ子政策」もあって中長期的には若い人がどんどん減っていく。その影響が雇用に表れ、2015〜20年には雇用の供給が需要を下回る。つまり大変な人手不足時代がやってくるのです。
   もうひとつは国民の権利意識の高まり。社会に改善を求める動きは社会の進歩の表れで、悪いことばかりではないが、これが民主化運動へとつながる可能性があります。中央政府としては、生活格差などで積もった民衆の不満をなだめすかし、ゆっくりとしたスピードで、時間を稼ぎたい。それでも、おそらく2015〜20年には、国政レベルでの民主化を迫られると見ています。政治面での民主化は不可避です。混乱が起きなければと思っています。(中略)
 いまの日本人に欠けているのは、「意欲」ではないでしょうか。わたしの大学の授業では、日本の学生と留学生ができるだけ話す時間をつくるようにしています。留学生は刺激を受けて、その目は輝いていますが、日本の学生は大人しい。学生だけでなく、社会全体が無気力になってしまっている気がする。かつての日本はアジアで唯一の先進国としての気概がありましたが、いまは内向きというか、なにかあると「政治の責任」「外国の責任」といって片付けてしまいます。「世界の中流でいい」みたいに感じられて、残念ですね。

米経済「狂乱の10月」…原油3割・株14%下落

 31日のニューヨーク株式市場で、ダウ平均株価(30種)は前日比144・32ドル高の9325・01ドルで取引を終えた。10月の月間の下落幅は1525ドルに達し、1896年の指数創設以来、最大だ。10月は円相場が対ドルで7円を超える円高・ドル安となり、原油価格が3割も値下がりするなど、米経済の失速を象徴する「狂乱の1か月」(市場関係者)となった。
 ダウ平均はリーマン・ブラザーズの経営破綻などで金融危機が一気に深刻化した9月以降、下落傾向を強め、10月27日には約5年7か月ぶりの安値となる8175・77ドルを付けた。月間の下落率は14%で、ロシア通貨危機の1998年8月の15%に匹敵する。
 一方、31日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時(日本時間1日午前6時)、前日比7銭円高・ドル安の1ドル=98円45〜55銭で大方の取引を終えた。日本銀行の利下げが小幅で、円売り・ドル買いの材料とまではなっていない模様だ。
 ニューヨーク原油先物市場は、最近の下落傾向を受けた買い戻しが入り、指標となるテキサス産軽質油(WTI)の12月渡し価格が前日比1・85ドル高の1バレル=67・81ドルで取引を終えた。
 10月は、景気減速に伴い石油需要が減るとの観測から下落を続け、9月30日の1バレル=100・64ドルからの下落率が33%に達した。

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ユーロ圏は既にリセッション状態、来年はほぼゼロ成長に

 欧州委員会は3日、秋季経済見通しを発表。ユーロ圏について、定義化されたリセッション(景気後退)の状態に陥っており、来年はほぼゼロ成長との予測を示した。(略)今回、ユーロ圏成長率が今年は1.2%で来年は0.1%に減速するとの見通しを示した。2010年は0.9%を見込んでいる。(略)08年第3・四半期のEUとユーロ圏の域内総生産(GDP)伸び率はマイナスと予想。ユーロ圏GDPは、第2・四半期にマイナスに落ち込んでいるため、2四半期連続でのマイナスと定義されるリセッションということになる。(略)来年はドイツ、フランス、イタリアでゼロ成長、アイルランドとスペインはマイナス成長と予想している。(略)米GDP伸び率が来年マイナス0.5%と予想。日本についてはマイナス0.4%と予想している。EU27カ国の中では、英経済が09年にマイナス1.0%に悪化、エストニアラトビアが08年と09年に、リトアニアが2010年にマイナス成長となる見通し。(中略)
 欧州委員会は、ユーロ圏のインフレ率について、08年見込みの3.5%から09年は2.2%、10年が2.1%に減速するとの見通しを示した。欧州中央銀行(ECB)はインフレ率を2%を若干下回る水準に維持することを目指しているが、消費者物価は、原油価格と食品価格の高騰により08年半ばまで1年で上昇した。ECBは、インフレリスクが低下していることから11月に利下げを実施する可能性を示唆している。欧州委員会もそれに同調する考えを示し「最近の商品価格の急落に加え、経済見通しの大幅悪化やそれに関連した労働市場の緩和により二次的影響のリスクは大幅に低下している」と指摘した。また、主に最近のユーロの実質実効為替レートの下落を背景に、輸入が輸出以上に鈍化する見通しであることから、純輸出がGDPの伸びに寄与するとの見方を示した。

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9月の消費者物価指数 2.3%上昇

  総務省が2008年10月31日に発表した9月の全国の消費者物価指数(CPI、2005年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が102.6となり、前年同月比2.3%上昇した。これで12か月連続の上昇となった。前月比では横ばいだった。また、生鮮食品を含む総合指数は102.7で、前年同月比2.1%上昇した。
  前年同月に比べて、食料なかでも食パンは18.7%上昇、光熱・水道では灯油が50.3%上昇、交通・通信ではガソリンが20.7%上昇したことなどが要因。前月との比較で内訳をみると、被服や履物、食料などが上昇。一方、交通・通信、教養娯楽などが下落していた。

6大銀、損失1兆円 9月中間、純利益は6割減に

 米国発の金融危機が大手邦銀の業績に深刻な影響を及ぼし始めた。三菱UFJフィナンシャル・グループなど6大銀行グループは今年9月中間期に株式の減損処理で総額2800億円、不良債権処理で前年同期の2倍近くとなる7200億円と、株安と景気減速を主な要因とする損失を1兆円計上する。不良債権は増勢が見込まれ、株価の低迷は収益や財務に打撃となる。銀行経営に再び「有事モード」が高まってきた。
 三菱UFJりそなホールディングスは31日、9月中間期の連結純利益がそれぞれ前年同期比61%減の1000億円、29%減の850億円になったと発表した。みずほフィナンシャルグループの9月中間期は7割減の940億円になった。三井住友、住友信託、中央三井トラストも10月に入って業績下方修正を発表済みだ。 

ソフトバンク、市場の不安解消のため現金収支予想など開示

ソフトバンクは)業績予想の開示を取りやめていたが、孫正義社長は会見で「世界の株式市場が暴落する中、借入金の多い当社は不安視されているので、現金収支が十分あることを説明する必要があると感じた」と述べた。
 2010年3月期の営業利益予想も発表し、4200億円を計画していることを明らかにした。同年度の現金収支は2500億円の黒字を見込んでいる。
 このほか買収した旧ボーダフォンジャパンの発行済み公募社債750億円をオフバランスするため保有する債務担保証券CDO)について、最大750億円の特別損失が発生する可能性があることも発表した。160銘柄で構成される同CDOのうち、現在6銘柄がデフォルトに陥っており、7銘柄がデフォルトになった場合には456億円、8銘柄以上では750億円の特別損失が発生するという。
 ソフトバンクが同日発表した08年4─9月期の連結営業利益は、前年比7.3%増の1800億円で、半期として過去最高となった。携帯電話事業は買い替え期間の長期化で端末販売が減少し減益となったが、それ以外は増益を確保した。

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