ローレライを観る前に
散々こき下ろした「ローレライ」ですが、ブッキーを見たくて劇場に足を運ぶ人や、オタクに付き合わされる人のために「これだけは前もって知っておくべし、ローレライ」特集を。ややネタばれですが、映画の背景がよく理解できるかもしれません(以下は史実)。
1)太平洋戦争で日本海軍はレーダーの性能が無いに等しく、眼の見えない子供が大人と戦っていたようなものだった。したがって軍部の人間は「優れた眼」を喉から手がでるほど欲しがっていた(だからって「ローレライ・システム」はないでしょう)。 2)1945年7月29日、サイパン・テニアン島のB-29基地に原爆の材料を届けた帰りの米重巡インディアナポリスを日本の潜水艦(伊58)が魚雷で撃沈。なお、この頃には日本と同盟を結んでいたナチスドイツも降伏*1しており、日本だけが連合国を相手に抵抗を続けていた(そりゃ、負けます)。 3)東京は米軍による空襲で焼け野原*2となっていたが、例外だったのは堀に囲まれた旧江戸城。そこにいたのはもちろん天皇。当時の日本人にとって天皇は神に等しい存在であったため、仮に天皇のいる東京に原爆が落とされるようなことになれば、それは首都を失う以上に国そのものの消滅を意味した。天皇の死は米軍に対する日本の抵抗を激しくすると予想されたため、アメリカは東京に原爆を投下しなかったといわれている。終戦直前にはソ連が不可侵条約を破って日本領に攻め込んできており、アメリカとしては対日戦を早く終結させたかった。もし日本のポツダム宣言受諾(無条件降伏)が遅れた場合には東京への原爆投下もあっただろう*3。 4)戦後、戦争の責任は昭和天皇にあるという非難の声が国内からも出てきたが、その多くはアメリカの占領政策が終わった後のこと。極東軍事裁判で日本の戦争責任者はすでに決していた(東條英機・広田弘毅ら7人がA級戦犯として死刑。B・C級戦犯の処遇決定は連合国の合同裁判による)。新たに作られた日本国憲法では天皇は「国の象徴」と位置づけられ、政治の決定権を放棄、儀式的な役割を担う形となった。日本の陸海軍は敗戦後に解体されたが、1950年に勃発した朝鮮戦争の際に日本本土の治安維持のために警察予備隊が組織され、52年に保安隊、54年に自衛隊となっている。