ご意見番、戦線離脱

orpheus2007-05-15

筑紫哲也さん、番組で初期の肺がん告白…当面休養

TBSによると、筑紫さんは15日から休養し、代役は立てないという。筑紫さんは「国民の2人に1人はがんにかかる。厄介ではあるが、勝てない病ではありません。症状は十分に克服できる。がんにうち勝って、また戻って参ります」と、復帰に強い意思を示した。

筑紫さんは朝日ジャーナル編集長や朝日新聞編集委員などを経て、1989年10月から同番組のキャスターを務めてきた。番組を病欠したことはなく、オウム真理教事件で、TBSが坂本堤弁護士のインタビュービデオを放映前に教団側に見せた際には「視聴者との信頼関係で、TBSは死んだに等しい」と発言したことでも話題になった。

テレ朝が急速に保守化(正確には中道化)する一方で、TBSが《オルタナティヴ》としての左傾化を模索してきたように思えるのは、元朝日の筑紫氏がTBSに「NEWS23」というジャーナリズムの牙城を築き、右傾化する日本社会への警鐘を鳴らし続けてきたからに他ならない*1。ただでさえ自浄能力に乏しい日本のマスコミである。筑紫氏なきTBSが今の路線を維持していけるのか、注目に値する。
国民投票法成立。憲法を改良する権利には相応の義務が伴うと老兵はつぶやき、戦場を去っていった。幾度となく滅亡の危機を乗り越えてきた民族だ、良識的な憲法を選択していくだろうと、信じながら。
多事争論(TBS)

*1:補足。本エントリではあえて左傾化という言葉を使用したが、それは筑紫氏の世代が右・左の対立構造で世界を捉えていることに沿ったためである。私は筑紫氏の言説に諸手を挙げて賛成している訳ではないが、マスコミの中にありながら《マスコミを相対化する目線》を忘れない筑紫氏のような存在は、ややもすると右へならえという風潮が未だに強い日本社会においては《良識》という名のブレーキをかけるためにも不可欠だと考えてきた。また、豊富な社会経験を持つ年長者には、思いつきや奇をてらっただけのものには簡単に流されないという長所もある。ホリエもんがメディアに登場してきた時、多くのマスコミが彼を「時代の寵児」ともて囃したが、筑紫氏は彼との対談の席でいち早く「この人物の言葉は不誠実で、怪しい」という反応を見せていたように思う。だが、他の報道者や多くの視聴者は筑紫氏のこうしたメッセージを読み取れていただろうか? 自分の感受性の摩耗を棚に上げてマスコミ叩きをする人間は多い。しかし、中身のない、口数だけの多い報道者もまた不要である。他の局も報道番組に力を入れるつもりならば、ジャーナリスト出身のベテラン・キャスターをメインに据えた番組をもっと作るべきであろう。