広瀬悦子(東京・紀尾井ホール)

四谷の紀尾井ホール島村楽器の音楽コンクールがあり、ゲスト演奏で招かれていたプロのピアニスト・広瀬悦子の演奏を聴く機会に恵まれた。紀尾井ホールはいわゆるシューボックス型のホールで、初期反射音と間接音が観客の耳にほぼ同時に到達するように設計されており、中高域のきらびやかなスタインウェイとは実に相性がいい。広瀬悦子は3歳からピアノを始め、6歳で“戴冠式”を演奏、'99年にパリ国立高等音楽院を主席で卒業という、いわば典型的な英才教育の出身者だが、アルゲリッチ国際コンクールで優勝の実績もあり、女流ピアニストとしての実力は申し分ない。今日のステージでも、広瀬は溢れ出るロマンの奔流にゆったり身を委ねながら、24の前奏曲、バラード、風(アルカン)、英雄ポロネーズを幽玄かつダイナミックに表現し、観客を大いに魅了していた。この魅力的なピアニストには、今後も注目していきたいと思う。
広瀬悦子(アスペン)
紀尾井ホール(新日鐵文化財団)