タイム:ゆっくりと歩くために〜あるいはガタカ2.0〜

★★★★★

21世紀版「ボニー&クライド」であり、21世紀版「ネズミ小僧(小娘)」でもある本作。いかにもSFな設定ありきのストーリーなのだが、やっぱりこの監督はハイセンス。「ガタカ」の海を彷彿とさせるショットもあり、本作でも海は「人工的なシステムの対極の存在」として二人を包み込む。「全力疾走」する生き方をやめられない二人には、おそらくハッピーエンドは来ないだろう。「その時」が来るまで、ただ走り続けて、ただ愛し続けて、ただ与え続ける日々。生きるということはギフト(贈られたもの)だと気がついた二人は、「時」を独り占めして無為にすごす代わりに、全力で走り続ける幸せを選んだのだ。誰かがゆっくりと歩くためには、誰かが走り続けなくてはいけない。所有する時代から、シェアする時代へのシフトをうまく切り取った作品。

監督・脚本アンドリュー・ニコル, In Time, 109 mins, 2011。